「仕事を辞めたいけど貯金はいくら必要?『生活費だけ』で考えると足りない理由」の記事のアイキャッチ画像

※本記事は2026年10月2日時点の制度情報をもとに作成しています。情報確認日:2026年10月27日(失業給付の給付制限を厚生労働省、国民年金の切替えを日本年金機構、任意継続の期限を協会けんぽで確認。10月30日に、失業給付の振込までの流れを厚生労働省、国民年金の特例免除を日本年金機構、国保の軽減を厚生労働省、退職時の住民税を自治体の公式FAQで確認し、貯金シミュレーターと退職後のお金カレンダーを追加)。制度・保険料・税額は個人の状況や自治体等で異なります。

退職前に必要な貯金は、生活費と無収入の期間、退職後の支払いで変わります。

「もう仕事を辞めたい。でも、辞めたあと生活できるか分からない」

こんな不安があると、「100万円あれば大丈夫?」「半年分あればいい?」と正解の金額を探したくなります。

でも、必要な貯金は人によって違います。この記事では、自分の場合はいくら必要なのかを、生活費・退職後の税金や社会保険・失業給付まで含めて整理します。

先に結論

「○万円あれば絶対に辞められる」という共通の正解はありません。まず考えるのは、無収入期間に必要な生活費+退職後に自分で払う税・社会保険+予備費です。

必要な貯金は「生活費×月数」だけでは足りない

たとえば毎月15万円で暮らしていて、6か月分を用意するなら90万円です。ただし、会社員のとき給与から差し引かれていた住民税や社会保険を忘れると、退職後に「思ったよりお金が減る」となりやすくなります。

必要資金 = 生活費 × 無収入を想定する月数 + 税・社会保険 + 臨時支出の予備費
計算例:貯金100万円で仕事を辞められる?

仮に毎月の最低生活費20万円、無収入6か月、退職後に払う健康保険・年金・住民税などの合計を月5万円、急な支出の予備費を20万円とすると、必要な現金は次のとおりです。

20万円×6か月+5万円×6か月+20万円=170万円

貯金100万円なら、この仮定では70万円不足。退職後の税・保険を含む毎月の支出が25万円なら、予備費を除いても100万円÷25万円=4か月分です。

税・社会保険の月5万円は説明用の仮定であり平均額ではありません。現在の生活費に既に含めている費目を二重計上せず、住民税・健康保険の通知額や国民年金の納付額で置き換えてください。失業給付の受給を前提にした計算ではありません。

次の会社が決まっていて空白期間がほぼない人と、辞めてから転職活動を始める人では、必要額は大きく違います。

まずは生活費だけで「何か月もつか」を見る

毎月の生活費3か月6か月9か月12か月
15万円45万円90万円135万円180万円
20万円60万円120万円180万円240万円
25万円75万円150万円225万円300万円
30万円90万円180万円270万円360万円

※上表は生活費のみの単純計算です。税金・健康保険・年金・引っ越し等は含みません。

たとえば貯金120万円でも、月15万円なら生活費だけで8か月、月25万円なら4.8か月です。「貯金100万円」という数字そのものより、自分の支出で何か月耐えられるかを見る方が現実的です。

退職すると増える・見えやすくなる3つの支払い

退職前には協会けんぽ任意継続の申出期限(原則資格喪失日から20日以内)、国民年金第1号の切替え期限(原則退職日の翌日から14日以内)も確認しておきましょう。健康保険の種類や扶養条件によって必要な手続きは異なります。出典:協会けんぽ・任意継続の加入条件、日本年金機構・国民年金に加入するための手続き。

1.健康保険

退職後の健康保険には、主に任意継続・国民健康保険・家族の健康保険の被扶養者という選択肢があります。協会けんぽの任意継続は、原則として退職日までに被保険者期間が継続2か月以上あり、退職日の翌日から20日以内の手続きが必要です。

任意継続では在職中のような会社との折半ではなく本人が全額負担します。一方、国民健康保険は前年所得や世帯人数などをもとに計算され、自治体によって算定方法が異なります。退職前に両方の見込み額を確認しておくと安心です。

2.国民年金

20歳以上60歳未満で、退職後すぐ次の会社の厚生年金に加入せず、配偶者の第3号被保険者にもならない場合などは、国民年金第1号被保険者への切替えが必要です。日本年金機構は、退職日の翌日から14日以内の手続きを案内しています。

失業等で納付が難しい場合には、一定の要件のもとで保険料免除等を申請できる制度もあります。

3.住民税

住民税は退職したら消えるわけではありません。給与から特別徴収されていた人が年の途中で退職すると、未徴収分を自分で納める場合があります。さらに、前年に一定以上の所得があれば翌年度にも住民税が課税される可能性があります。

納め方や時期は退職時期・自治体等で異なるため、最後の給与明細だけを見て退職後の支出を判断しないことが大切です。

失業給付があるから貯金は少なくても大丈夫?

失業給付(雇用保険の基本手当)は、退職した人全員が自動的にもらえるわけではありません。原則として、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上などの受給要件があります。

また、正当な理由のない自己都合退職で、退職日が2025年4月1日以降の場合、受給手続き後の7日間の待期に加え、原則1か月の給付制限があります。過去5年間に一定回数の自己都合退職がある場合などは扱いが異なります。

「辞めた翌月から給料の代わりに失業給付が満額入る」と考えて資金計画を立てないこと。受給資格、離職理由、認定日、給付日数などで実際の入金時期・金額は変わります。

参考:厚生労働省・2025年4月以降の自己都合退職と給付制限。対象となる教育訓練等により給付制限が解除される例外もあります。

自分の数字で計算:退職前の貯金シミュレーター

上の式に自分の金額を入れて、「今の貯金で何か月暮らせるか」「あといくら足りないか」を確かめられるようにしました。分からない項目は、まず仮の数字で入れて、通知や見積もりが届いたら置き換えてください。

退職前の貯金シミュレーター

入力した数字はこのページの中だけで計算し、送信しません。初期値は説明のための仮の例です。

① 今あるお金と毎月の支出
円
投資中のお金や、使い道が決まったお金は除く
円
家賃・食費・光熱費・通信費など。税金と保険料は下に分けて入れる
② 退職後に自分で払うもの
円
任意継続か国保の見込み額。家族の扶養に入るなら0
円
令和8年度は月17,920円。すぐ次の会社に入る・配偶者の扶養に入るなら0
円
最後の給与で一括で引かれる分は除く。納税通知書の金額で置き換える
円
急な出費のために残しておく額
③ 収入がない期間と、入るお金
か月
次の給料が入るまでの月数
円
受給できるか分からないなら空欄(0)のまま
か月目
自己都合退職は給付制限があり、最初の入金は遅れる(下のカレンダー参照)

この条件で必要なお金—
今の貯金との差—
貯金で暮らせる月数—
毎月出ていくお金—

月ごとの残高を見る
月出ていくお金失業給付月末の残高

計算条件:必要なお金=(生活費+健康保険料+国民年金)×収入がない月数+住民税+予備費−失業給付の見込み×受け取る月数。住民税と予備費は1か月目に差し引き、予備費は使わずに残す前提で「暮らせる月数」を出しています。社会保険料・住民税・失業給付の実際の金額は、個人の収入・自治体・離職理由などで変わります。

退職後のお金カレンダー:いつ、何を払う・受け取る?

同じ貯金額でも、支払いがいつ来るかを知らないと「思ったより早く減った」となりがちです。退職の前後で起きることを時期の順に並べました。日付や金額は人によって違うため、右の確認先で自分の場合を確かめてください。

時期起きること確認先
最後の給与1〜5月に退職する場合、5月までの住民税を最後の給与でまとめて引くのが通常です。引ききれないときは、自宅に納税通知書が届くことがあります。勤務先・市区町村(板橋区のFAQ)
退職日の翌日から14日以内すぐ次の会社の厚生年金に入らず、配偶者の扶養(第3号)にも入らない場合は、国民年金への切替え。令和8年度の保険料は月17,920円です。日本年金機構
退職日の翌日から20日以内協会けんぽの任意継続を選ぶ場合の申出の期限。国民健康保険・家族の扶養と保険料を比べてから決めます。協会けんぽ・市区町村
6月以降に退職した場合給与から引かれていた住民税の残りは、自分で納める形(普通徴収)に変わります。市区町村(相模原市のFAQ)
失業給付の手続きの後手続き日から原則7日がたった翌日から、正当な理由のない自己都合退職は原則1か月の給付制限があります。その後、原則4週間に1回の失業認定日にハローワークで認定を受け、認定日の約7日後に振り込まれます。厚生労働省のQ&A
翌年度退職した年に所得があれば、翌年度の住民税がかかります。会社員のときのように給与から引かれないため、納税通知書で自分で払います。市区町村

失業給付の1日あたりの金額(基本手当日額)は、離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った「賃金日額」のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)で、賃金の低い人ほど高い率です(ハローワークインターネットサービス)。給料と同じ額が入るわけではないため、シミュレーターに入れるときは少なめに見積もってください。

支払いを減らせる公的な制度も確認する

退職後の支払いは「払うしかない」とは限りません。条件に合えば、次の制度で負担が軽くなることがあります。どちらも自分で申請・届出が必要です。

制度対象と内容手続き先
国民年金の免除(失業等による特例)失業・倒産などの事実を確認できると、前年の所得にかかわらず保険料の免除・納付猶予を受けられる特例があります。雇用保険の離職票や受給資格者証のコピーなどを添えて申請し、承認後も翌年度は改めて申請が必要です。日本年金機構・市区町村の国民年金窓口
国民健康保険料の軽減(非自発的失業者)倒産・解雇などで離職した人(特定受給資格者)や、雇い止め・正当な理由のある自己都合で離職した人(特定理由離職者)は、前年の給与所得を30/100として保険料を計算します。期間は失業時からその翌年度末までです。厚生労働省・市区町村の国保窓口

国保の軽減は、離職理由が対象に当たるかで決まります。対象になる見込みがある人は、シミュレーターの健康保険料を、軽減後の見込み額で入れ直してみてください。国民年金を免除された期間が将来の年金額にどう反映されるか、あとから納める(追納)かどうかは、日本年金機構の案内で確認しておくと安心です。

ケース別:いくら用意するか考えてみる

ケースA|次の勤務先が決まっている
空白期間が短ければ、半年分を機械的に貯める必要性は低くなります。空白期間の生活費、保険・年金の切替えの有無、住民税、引っ越し費用などを個別に確認します。
ケースB|辞めてから転職活動する
月20万円で暮らし、6か月の無収入期間を想定するなら、生活費だけで120万円です。ここに退職後の健康保険・年金・住民税・転職活動費・予備費を加えて考えます。
ケースC|貯金が50万円しかない
生活費が月20万円なら、生活費だけで2.5か月分です。すぐ退職するかどうかを金額だけで決めず、在職中に転職活動を始める、固定費を下げる、利用できる公的制度を確認するなど、先に「無収入期間を短くする」方法も検討します。

自分の場合はいくら必要?5分で確認する方法

□ 家賃・住宅費

□ 食費

□ 水道光熱費

□ 通信費

□ 車・交通費

□ 保険・サブスクなどの固定費

□ 退職後の健康保険

□ 国民年金

□ 住民税

□ 転職活動費

□ 引っ越しなどの臨時支出

まず直近3か月の口座・カード明細から「実際に毎月いくら使っているか」を出します。そのうえで、何か月無収入でも動ける状態にしたいかを決めてください。

「辞めたいのに、お金が怖い」ときの順番

必要なのは「とにかく我慢して貯金する」ことではありません。数字を順番に見えるようにします。

STEP 1 1か月の最低生活費を出す
STEP 2 退職後の健康保険・年金・住民税を確認する
STEP 3 失業給付の受給要件と入金までの期間を確認する
STEP 4 現在の貯金で何か月もつか計算する
STEP 5 足りなければ「貯める」だけでなく、在職中の転職活動や固定費削減も検討する

こうすると、「辞めたいけど怖い」という漠然とした不安が、あと何万円必要か・何を確認すべきかという具体的な課題に変わります。

まとめ|「100万円あるか」より「何か月暮らせるか」

退職前の貯金は、一律の正解を探すより、自分の生活費と退職後の支払いから逆算する方が現実的です。

生活費 × 無収入期間 + 税・社会保険 + 予備費を基本に、失業給付は受給要件と入金時期まで確認する。この数字が見えるだけでも、今すぐ辞めるのか、転職先を決めてから辞めるのか、あと数か月準備するのかを判断しやすくなります。

主な公的情報

住民税の計算と納付方法は、その年の1月1日に住所がある市区町村の公式案内を確認してください。

※この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税額・保険料・受給可否については、ハローワーク、年金事務所、健康保険の窓口、お住まいの自治体などでご確認ください。

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