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今年の昇給、平均と比べるなら
「所定内賃金」どうしで、率で比べる。
- 厚生労働省の令和8年調査では、1人平均賃金の改定額は月13,926円、改定率は4.4%(前年13,601円・4.4%)。賃金を引き上げた・引き上げる企業は92.0%です。
- この「1人平均賃金」は残業代などを含まない所定内賃金(諸手当は含む)の平均です。自分の昇給も、基本給と毎月決まった手当の合計で比べます。月25万円の人なら、平均と同じ4.4%は月11,000円です。
- 昇給は基本給だけでなく、残業代の単価・賞与・社会保険料にも響きます。社会保険料は「等級」で決まるため、昇給額が小さくても1等級上がると年3万円以上増えることがあります(下の早見表)。
「今年の昇給は月5,000円だったけど、これって少ない?」。事務・営業・販売・製造など職種を問わず、昇給の通知や4月以降の給与明細を見て気になる人は多いはずです。この記事では、厚生労働省が2026年10月21日に公表した調査の数字を物差しにして、自分の昇給率の出し方と、昇給が手取り・残業代・賞与にどう効くかを計算します。
昇給の平均は月13,926円・4.4%(2026年・厚生労働省調査)
厚生労働省「令和8年賃金引上げ等の実態に関する調査」は、常用労働者100人以上の民営企業を対象に、2026年中の賃金の改定(9〜12月の予定を含む)を調べたものです(3,668社を抽出し1,862社が有効回答)。企業規模別の結果は次のとおりです。
| 企業規模 | 改定額(2026年) | 改定率(2026年) | 改定額(2025年) | 改定率(2025年) |
|---|---|---|---|---|
| 企業規模計 | 13,926円 | 4.4% | 13,601円 | 4.4% |
| 5,000人以上 | 16,680円 | 4.8% | 16,784円 | 5.1% |
| 1,000〜4,999人 | 15,402円 | 4.7% | 15,859円 | 5.0% |
| 300〜999人 | 12,912円 | 4.2% | 12,308円 | 4.0% |
| 100〜299人 | 11,279円 | 3.9% | 10,264円 | 3.6% |
産業別では、改定額が最も高いのは建設業(20,599円)、最も低いのは医療・福祉(8,540円)でした。また、定期昇給制度がある企業は84.2%で、定期昇給を行った・行う企業は81.2%(前年76.8%)。定期昇給制度がある企業のうち、ベースアップ(賃金表の改定で水準を引き上げること)を行った・行う企業は57.9%です。
平均と比べる前に知っておきたい3つの前提
- 残業代は含まない:調査の「1人平均賃金」は所定内賃金(諸手当を含み、時間外・休日・深夜手当などは含まない)の1か月1人当たりの平均です。残業が減って総支給が下がっても、昇給が少なかったとは限りません。
- 会社ごとの平均の数字:企業が回答した「1人平均」の改定額で、個人の昇給額の分布ではありません。年齢・評価・役職によって、同じ会社でも昇給額は違います。
- 100人未満の企業は対象外:規模が小さいほど改定額が低い傾向があり、100人未満の会社に勤めている人は、規模別の100〜299人の行を目安にするのが近い比べ方です。
自分の昇給率の出し方と、平均並みの昇給額の早見表
昇給率の計算式
昇給率(%)=(昇給後の所定内賃金 − 昇給前の所定内賃金)÷ 昇給前の所定内賃金 × 100
所定内賃金=基本給+毎月決まって支払われる手当(役職手当・資格手当・住宅手当・通勤手当など)。残業代・休日出勤手当・深夜手当は入れません。
例:昇給前25万円 → 昇給後25万5,000円なら、5,000円÷25万円×100=2.0%
平均の4.4%と同じ率で昇給した場合の金額は、次のとおりです(100〜299人の3.9%、5,000人以上の4.8%も並べています)。
| 昇給前の所定内賃金 | 3.9%(100〜299人) | 4.4%(企業規模計) | 4.8%(5,000人以上) |
|---|---|---|---|
| 月20万円 | 7,800円 | 8,800円 | 9,600円 |
| 月22万円 | 8,580円 | 9,680円 | 10,560円 |
| 月25万円 | 9,750円 | 11,000円 | 12,000円 |
| 月28万円 | 10,920円 | 12,320円 | 13,440円 |
| 月30万円 | 11,700円 | 13,200円 | 14,400円 |
| 月35万円 | 13,650円 | 15,400円 | 16,800円 |
昇給前後の金額は、給与明細の「基本給」と各手当の欄で確認できます。明細の読み方は給与明細の見方まとめにまとめています。
昇給5,000円・1万円・2万円で、手取り・残業代・賞与はいくら増える?
同じ人の基本給が月5,000円・1万円・2万円上がった場合を比べます。
※説明のための仮の例です。前提:基本給24万円+職務手当1万円(所定内賃金25万円)、月平均所定労働時間160時間、残業は毎月20時間で一定、通勤手当なし、賞与は「基本給×2か月」を年2回(会社の規程による仮の設定)、協会けんぽ東京支部(健康保険9.85%+子ども・子育て支援金0.23%)、40歳未満、厚生年金18.3%、雇用保険の労働者負担5/1,000。昇給前の年収は約443万円です。
| 項目(1年分) | 月5,000円 | 月1万円 | 月2万円 |
|---|---|---|---|
| 昇給率(所定内賃金25万円に対して) | 2.0% | 4.0% | 8.0% |
| 残業代の1時間単価(昇給前1,953円) | 1,992円 | 2,031円 | 2,109円 |
| 月給の増加(×12か月) | 60,000円 | 120,000円 | 240,000円 |
| 残業代の増加(20時間×12か月) | 9,375円 | 18,750円 | 37,500円 |
| 賞与の増加(基本給×年4か月) | 20,000円 | 40,000円 | 80,000円 |
| 額面の増加(合計) | 89,375円 | 178,750円 | 357,500円 |
| 標準報酬月額(昇給前28万円) | 30万円(1等級上) | 30万円(1等級上) | 32万円(2等級上) |
| 健康保険・厚生年金の増加(月給分+賞与分) | 36,894円 | 39,732円 | 79,464円 |
| 雇用保険料の増加 | 約447円 | 約894円 | 約1,788円 |
| 社会保険料を引いた増加(税引前) | 約52,034円 | 約138,124円 | 約276,249円 |
| 所得税・住民税の増加(目安) | 約5,160円 | 約15,464円 | 約30,927円 |
| 手取りの増加(目安) | 約4.7万円 | 約12.3万円 | 約24.5万円 |
計算の中身(月1万円の昇給)
- 残業代の単価:所定内賃金26万円÷160時間×1.25=2,031.25円(昇給前は25万円÷160時間×1.25=1,953.125円)。20時間で月1,562.5円、年18,750円の増加
- 賞与:基本給25万円×2か月×2回=100万円(昇給前96万円)で、年4万円の増加
- 標準報酬月額:報酬月額は26万円+残業代40,625円=300,625円で、30万円の区分(29万円以上31万円未満)。昇給前は289,062円で28万円の区分。本人負担の保険料は月39,732円→42,570円で月2,838円増、年34,056円
- 賞与の保険料:100万円×(5.04%+9.15%)=141,900円(昇給前136,224円)で、年5,676円の増加
- 雇用保険:178,750円×5/1,000=893.75円
社会保険料を引いた増加:178,750円−34,056円−5,676円−893.75円=約138,124円
所得税・住民税の目安は、給与所得控除が「収入×20%+44万円」の区分(年収360万円超660万円以下)で、増えた額面の80%から社会保険料の増加分を引いた額に、所得税5.105%(復興特別所得税を含む)と住民税10%を掛けたものです。基礎控除などの所得控除の区分が変わる年収の人や、所得税率10%以上の人は変わります。住民税の増加は翌年6月からの天引きに反映されます。
月5,000円の昇給でも社会保険料が年3.7万円増える理由
健康保険・厚生年金の保険料は、給料そのものではなく「標準報酬月額」の区分で決まります。この例の昇給前の報酬月額(残業代を含む)は289,062円で、28万円の区分(27万円以上29万円未満)の上限に近いため、5,000円の昇給でも30万円の区分に上がりました。反対に、区分の下の方にいる人は、昇給しても保険料が変わらないことがあります。
増えた厚生年金保険料は、将来の老齢厚生年金の計算に使われる記録にもなります。「手取りが増えない=損」とは言い切れません。
昇給した月から何が変わる?反映のタイミング早見表
4月に昇給した場合の例です。給与の締め日・支払日や、保険料を翌月の給与から引くかどうかは会社によって違います。
| 項目 | いつから変わるか | 確認するところ |
|---|---|---|
| 基本給・手当 | 昇給後の給与から | 給与明細の支給欄、昇給通知 |
| 残業代の単価 | 昇給後の給与の残業分から | 残業代÷残業時間で単価を逆算 |
| 雇用保険料・毎月の所得税 | 昇給後の給与から | 控除欄 |
| 健康保険・厚生年金(2等級以上上がった場合) | 随時改定:変動後の給与が支払われた月から4か月目(4月払いで変動なら7月) | 7月分以降の保険料 |
| 健康保険・厚生年金(1等級以内の場合) | 定時決定:4〜6月の報酬の平均で、9月分から | 9月分以降の保険料 |
| 賞与 | 次の賞与から(賞与の計算方法は会社の規程による) | 賞与明細、賃金規程 |
| 住民税 | 翌年6月から(前年の所得で計算) | 翌年5〜6月の住民税の通知 |
日本年金機構によると、随時改定は「固定的賃金の変動」「変動月から3か月の報酬の平均による標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差」「3か月とも支払基礎日数が17日以上」の3つがそろったときに行われます。9〜10月に社会保険料が上がった理由は9月・10月に社会保険料が上がったのはなぜ?で詳しく説明しています。
昇給が反映されているか、給与明細で確かめるチェックリスト
- 昇給通知(辞令・メール)の金額が、基本給と手当のどちらに入ったかを確認した
- 昇給後の給与明細で、基本給・手当が通知どおりの金額になっている
- 残業代÷残業時間で単価を出し、昇給後の金額で計算されている(基本給や職務手当が上がれば単価も上がる。家族手当・実費の通勤手当・住宅手当などは単価に入れないことができる)
- 昇給前後で、残業時間の違いを除いた所定内賃金どうしを比べた
- 賞与の計算方法(基本給×○か月か、別の基準か)を賃金規程で確認した
- 7月分または9月分から社会保険料が変わっていれば、標準報酬月額の区分が上がったためか確認した
残業代の単価が昇給後の金額で計算されているかは、残業代・夜勤手当の計算シミュレーターに時給(月給÷月平均所定労働時間)を入れると確かめられます。単価に入れる手当・入れない手当の区別も同じページで確認できます。
会社に確認するときの聞き方の例
「今年の昇給は基本給に反映されていますか、それとも手当でしょうか。残業代と賞与の計算に入るかを確認したいです」
「次の昇給の時期と、評価で昇給額が変わる仕組み(等級表や評価基準)を教えてください」
評価制度や賃金表が就業規則・賃金規程に書かれている会社もあります。まずは規程を読んでから聞くと、話が具体的になります。
昇給が平均より少なかったときの判断フロー
- 比べ方を確かめる:所定内賃金どうし、率で比べたか。会社の規模の行(100〜299人なら3.9%)とも比べたか。
- 理由を確かめる:評価・等級・会社の業績のどれが理由か。来年以降の昇給の仕組み(定期昇給の有無、ベースアップの方針)を聞いたか。
- 今の会社で上げる方法を探す:資格手当・役職・異動など、社内で賃金が上がる道があるか。
- 外と比べる:同じ職種の求人の月給・賞与・固定残業代を、実質時給で比べる。転職したほうが上がるかは、数字で比べてから決める。
求人と今の会社の比べ方は求人2社の比較シミュレーターで、実質時給と年収を並べて確かめられます。転職するかどうかの整理から始めるなら転職の始め方まとめが入口です。
よくある質問
昇給したのに手取りが減ったのはなぜ?
昇給と同じ時期に、社会保険料の区分が上がった(9月分から)、住民税の額が変わった(6月から)、残業が減った、などが重なると、手取りが前より少なくなることがあります。月ごとの手取りと支出の比べ方は昇給したのにお金が残らない?で計算できます。
手当が上がった場合も残業代は増えますか?
役職手当・職務手当・資格手当などは、残業代の単価の計算に入ります。家族手当、通勤手当(実際の費用に応じて支給するもの)、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、単価から除くことができます(労働基準法施行規則第21条)。
定期昇給とベースアップの違いは?
厚生労働省の調査の定義では、定期昇給は就業規則などの制度に従って毎年一定の時期に行う昇給(年齢・勤続や、毎年時期を決めて行う評価による昇給を含む)、ベースアップは賃金表の改定で賃金水準を引き上げることです。
この次に読むなら
- 残業代・夜勤手当の計算シミュレーター:昇給後の残業代の単価が正しいかを、時給から計算
- 給与明細の見方まとめ:基本給・手当・社会保険料・税金を項目ごとに確認
- 転職で失敗しない求人比較:今の給料と求人を、実質時給と年収で比べる
- 冬のボーナスの手取りはいくら?:昇給で増えた賞与の手取りを早見表で検算
参考資料・確認先
※この記事は2026年11月2日時点の公的資料をもとにした一般的な情報です。調査の数字は100人以上の企業の平均で、個人の昇給額を示すものではありません。実際の保険料・税額は、加入している健康保険、残業時間、手当の種類、扶養や控除の状況、会社の給与の締め日・支払日などで変わります。昇給や賞与の仕組みは、勤務先の就業規則・賃金規程で確認してください。